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バイオプラスチックの高機能化
定価 ¥ 66,000(税込)
販売価格 ¥ 66,000(税込)
商品番号:dr0075
ISBN: 978-4-910581-31-6
定価 ¥ 77,000(税込)
販売価格 ¥ 77,000(税込)
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■発刊日:2023年1月6日
■販売者:パテントテック社
■出版社:株式会社シーエムシー・リサーチ
■資料体裁:A4判・並製・183頁・カラー
■本書の特徴
・ 実際の研究開発と実用化の経験に基づいて、バイオプラスチックの基礎から応用について解説!
・ プラスチック全体の概説、構造と物性の関係、歴史、環境問題の対策と規制の動向を網羅!
・ 主要なバイオプラスチックの特徴、生産動向を記載!
・ 日本や世界の利用動向とその傾向、今後のバイオプラスチックの展望!
■刊行にあたって
プラスチックスは、1950年代以降、石油の大量生産に伴って、様々な構造のものの開発と量産化が進み、優れた利便性と低コスト化から急速に生産量が増大した。現在までに、日用品などの汎用製品から、電子機器、自動車などの耐久製品まで、多種の製品に幅広く利用されており、今や我々の生活に必須な素材となっている。一方、量産化されてから、まだ70年程度と歴史が浅く、その負の側面として使用後の処理と廃棄物の問題が顕在化している。すなわち、安価であるため、使い捨ての汎用製品に大量に使用されているが、そのリサイクルは進んでおらず、これは耐久製品用途でも同様であり、世界全体でリサイクル率は10%にも及んでいない。一方、埋め立てや投棄など、土壌や海洋などの環境中に廃棄されたものは、その優れた耐久性がかえって災いとなり、長期間、分解せずにそのまま留まってしまうため、今や、地球上の最大規模の環境汚染物質となっている。
このプラスチックスによる環境問題は1980年代から活発に議論されるようになり、リサイクルの推進とともに、廃棄後、環境中で分解できる生分解プラスチックの開発が進み、一部実用化された。さらに、1990年代から、石油資源の枯渇や温暖化などの地球規模の環境問題が顕在化し、このため、これらの対策に寄与できる植物を原料としたバイオマスプラスチックスへの関心が高まり、この開発と実用化が進められた。そして、生分解プラスチックとバイオマスプラスチック(現在、両方を合わせて、バイオプラスチックとされる)の開発と利用は徐々に拡大したが、しかし、現在のこれらの合計生産量は、石油原料系のプラスチックのわずか0.5%程度であり、プラスチックの環境対策への寄与はまだ低い。このまま、プラスチックによる環境汚染が進行すれば、紙、木材などの他の素材への代替えが進み、いずれは、プラスチックが不要なものとなりかねない。
著者は、プラスチックの環境対策に長年、関わっており、特に、バイオマスプラスチックの研究開発には日本電気㈱と筑波大学において、23年以上、携わってきた。一般企業においての材料開発は、研究投資に対する見返りから、通常、数年での実用化を目指すため、バイオマスプラスチックにおいても、本来の高度な環境調和性をある程度犠牲にしても、実用特性の達成を目指す傾向がある。このため、製品化できても、環境対策への寄与度が不十分なものが多い。これに対して、著者は、高度な環境調和性とともに、優れた実用特性や新たな付加価値となる新機能を同時に達成するという、従来の企業では困難とされた目標にあえて挑戦した。その結果、デンプン原料系や非食用の植物原料系で、高い植物成分率と高機能性を両立するバイオマスプラスチックを開発し、電子機器などの製品に実用化した。
本書では、このような実際の研究開発と実用化の経験に基づいて、バイオプラスチックの基礎から応用について解説する。すなわち、第1章では、バイオプラスチックを含むプラスチック全体の概説、構造と物性の関係、歴史、環境問題の対策と規制の動向について解説する。第2章では、利用できるバイオマスの種類、生分解性と海洋分解性、主要なバイオプラスチックの特徴、生産動向、そして日本や世界の利用動向とその傾向の違いについて説明する。さらに、著者らが実施した実際の研究開発・製品化の事例として、第3章で全体の概説と開発戦略、以降はその具体例として、第4章でポリ乳酸複合材、第5章で非食用植物原料のセルロース樹脂複合材、第6章で藻類バイオマスプラスチックについて解説する。最後に第6章で全体のまとめと今後のバイオプラスチックの展望について述べる。
本書は、バイオプラスチックやそれを利用する様々な製品に関係する研究開発、製品企画、技術営業に関わる若手からベテランまでの人材を対象としており、バイオプラスチックの知見をわかりやすく、かつ詳細に、さらに、研究結果に対するメカニズムも十分に説明することで、バイオプラスチックの本質への理解が深まることを重視している。本書が読者の今後のバイオプラスチックに関わる活動に役に立つことを心から願っている。
位地 正年
第1章 プラスチックの概論
1. はじめに
2. プラスチックスの定義と分類、種類と用途
2-1 プラスチックとは?
2-2 高分子の形態とプラスチックの定義・分類
2-3 主要なプラスチックの構造と用途
3. プラスチックへの要求物性、分子構造と物性の関係
3-1 分子構造の要因と物性の関係
3-2 耐熱性
3-3 強度特性
3-4 流動性(粘度)
3-5 相溶性(混ざりやすさ)
3-6 化学的耐久性
4. プラスチックの添加剤
5. 製造・成形方法
5-1 重合・改質
5-2 混錬・成形方法
6. プラスチックの歴史の概要
6-1 天然素材系プラスチックの時代
6-2 半合成のプラスチック(天然物+合成物の複合体)
6-3 完全合成の石油系プラスチックの全盛期
6-4 環境対応型プラスチックの進展
7. プラスチックの環境問題と対策
7-1 プラスチック廃棄物の全体動向
7-2 プラスチック廃棄物の海洋汚染
7-3 プラスチックの環境対策
8. まとめ
参考文献
第2章 バイオプラスチックの基礎と最新の動向
1. はじめに
2. バイオプラスチックの分類・特徴と課題
2-1 定義と分類
2-2 バイオマスプラスチックの特徴と課題
3. バイオマスプラスチック用のバイオマス原料
4. プラスチックの生分解性
4-1 生分解の機構(分子構造と生分解性の関係)
4-2 生分解性の評価方法
5. バイオプラスチックの生産・利用や技術開発の動向
5-1 世界の動向
5-2 日本の動向
6. 現在のバイオプラスチックスの環境対策への寄与と課題
6-1 汎用製品用途
6-2 耐久製品用途
7. 主要なバイオプラスチックの解説
7-1 バイオポリオレフィン(バイオPE、PP)
7-2 バイオPET
7-3 バイオPBS
7-4 PBAT
7-5 ポリ乳酸
7-6 バイオポリアミド(PA11)
7-7 多糖類系バイオマスプラスチック
7-8 PHA
8. まとめ
参考文献
第3章 高機能バイオプラスチックの開発事例の全体説明
1. 耐久製品用バイオプラスチックの動向と課題
2. 新バイオマスプラスチックの開発の狙い
参考文献
第4章 開発事例 1:高機能ポリ乳酸複合材
1. はじめに
2. ケナフ繊維添加ポリ乳酸複合材の開発
2-1 ポリ乳酸へのケナフ繊維の添加効果
2-2 ケナフ繊維添加ポリ乳酸複合材の強度特性の改良
2-3 ケナフ繊維による着色対策
2-4 ケナフ繊維添加ポリ乳酸複合材の電子機器への利用
3. 難燃性ポリ乳酸複合材の開発
3-1 水酸化アルミニウムと難燃助剤によるポリ乳酸の難燃化
3-2 ポリ乳酸の耐加水分解性の改良
3-3 ポリ乳酸の結晶化速度の向上
3-4 難燃性ポリ乳酸複合材の高度な耐久性実証と電子製品への展開
4. 新たな付加価値となるポリ乳酸への新機能の付与
4-1 リサイクル可能な形状記憶性ポリ乳酸複合材の開発
4-2 高伝熱性ポリ乳酸複合材の開発
4-3 3層構造ナノ粒子による高じん性のポリ乳酸ナノコンポジットの開発
5. まとめ
参考文献
第5章 開発事例 2:セルロースを利用したバイオマスプラスチックの開発
1. はじめに
2. 長鎖・短鎖付加セルロース樹脂の開発
2-1 カルダノール付加酢酸セルロース樹脂
2-2 長鎖・短鎖付加セルロース樹脂の構造と物性のまとめ
2-3 添加剤の利用によるセルロース樹脂複合材の総合的な実用物性の実現
3. 半不均一系合成プロセスによる省エネルギー製造技術の開発
3-1 セルロース樹脂の合成プロセスの課題
3-2 半不均一系合成プロセスの開発
4. 漆ブラック調セルロース系バイオプラスチックの開発
4-1 漆と漆器
4-2 特有な添加成分による漆ブラック調の光学特性の実現
4-3 耐傷防止性の改良
4-4 蒔絵調プリント印刷の実現
4-5 漆ブラック調セルロース樹脂複合材の製品展開
5. まとめ
参考文献
第6章 藻類系バイオプラスチック
1. はじめに
1-1 藻類とは
1-2 藻類バイオマスプラスチックとその製造方法
2. 藻類バイオマスプラスチックと低CO2排出での生産プロセスの開発
2-1 新規藻類バイオマスプラスチックの分子設計と実用特性の実証
2-2 低CO2排出量の生産プロセスの開発
3. まとめ
参考文献
第7章 全体のまとめと今後の展望
1. 全体のまとめ
2. 今後の展望:プラスチックの循環型環境対策でのバイオプラスチックの役割と期待